『四十肩・五十肩は医者に行かなくても痛みを我慢して動かしてりゃ治るんだよ』
このように考えている方が世間では多いように感じます。
はたして本当にそうなのでしょうか?
四十肩・五十肩という言葉はみなさん一度くらいは聞いたことがあるのではないかと思います。
これらは名前の通り、40代・50代で起きやすい肩の痛みの総称です。
四十肩・五十肩の正式名称は肩関節周囲炎といいます。
つまり、肩関節の周囲で炎症が生じて痛みが起きる状態のことを指しています。
ここで言う『肩関節の周囲』には下の図のような組織があります。
<引用>運動器疾患のなぜが分かる解剖学
肩関節は上の図のように層状に関節の膜(関節包と言います)、靭帯、筋肉が重なって構成されています。
これらの組織は極めて密接に重なっているため、どこか1つの組織に炎症が起きると隣接している他の組織にも炎症が波及しやすい構造になっています。
それでは、どのようにして肩関節周囲の組織に炎症が生じるのでしょうか?
これについては様々な原因が考えられますが、加齢に伴って生じる炎症の原因のほとんどは、個人的には関節内での『挟み込み』によるものだと考えています。
ここで言う『挟み込み』は、肩甲骨と上腕骨の間で起きます。
そもそも肩関節は肩甲骨の“カップ”と上腕骨の“ボール”によって成り立っています。
<引用>プロメテウス解剖学
その肩甲骨と上腕骨で成り立っている関節の間に、さきほど説明した筋肉や靭帯などの『肩関節の周囲組織』が存在します。
この肩甲骨の“カップ”と上腕骨の“ボール”の間で『肩関節の周囲組織』が挟み込まれることで炎症が生じます。
肩を動かすときには、肩関節だけでなく、肩甲骨も同時に動きます。
(腕を真上に挙げると正常では180°挙がりますが、肩甲骨が全く動かなかった場合、120°までしか挙がらないと言われています)
<引用>運動学テキスト
正常では腕の動きに伴って、肩甲骨が同時に動くことで肩甲骨の“カップ”と上腕骨の“ボール”が接触せずスムーズに動くようになっています。
しかし、肩甲骨の動きが悪くなってしまうと、腕の動きに肩甲骨の動きが伴わず、『肩関節周囲の組織』の『挟み込み』が起きてしまいます。
<引用>肩関節拘縮の評価と運動療法
挟み込みが生活内で反復して生じてしまうと、『肩関節周囲の組織』に炎症・痛みが生じて、いわゆる四十肩・五十肩と言われる状態の始まりになります。
これまでのことを踏まえて、もう一度最初の問いかけに立ち戻ってみます。
『四十肩・五十肩は医者に行かなくても痛みを我慢して動かしてりゃ治るんだよ』
これについて、みなさんはどう考えますか?
もうお分かりですよね?
肩関節の周囲組織の挟み込みが起きていて、痛み・炎症が生じている状態で、痛みを我慢して無理やり動かせば、その痛み・炎症はより強まって状態は悪化してしまいます。
肩に痛み・炎症が生じている状態で無理やり動かすのは、四十肩・五十肩の治療としてはタブーです。
まずは炎症を治めるために、痛みをできる限り出さないように努めることが最優先になります。
しかし、炎症が治まってしばらくすると次のような状態になることが多いはずです。
『じっとしていても痛くないし、動かしてもそれほど痛まないけど、腕が上がらなくなっちまったよ』
こういった状態になると話は変わってきます。
この状態では炎症は治まり、治癒は完了しています。
しかし、炎症が起きると『肩関節周囲の組織』の間で癒着が生じたり、組織自体の柔軟性が低下するといった現象が必ず生じます。
この現象は炎症の程度が強ければ強いほど、炎症している期間が長ければ長いほど、悪化してしまいます。
こういった状態であれば、『肩関節周囲の組織』の間の癒着、組織自体の柔軟性の低下を改善するために、ある程度痛みが出たとしても肩を動かすことが必要になってきます。
つまり、肩を動かすべきかそうでないかは、肩の炎症が出始めたばかりなのか、治癒が終わっているのかといった時期によって異なるということが分かります。
またどちらにしても、そもそも炎症が生じる原因となる『挟み込み』が起こらないように、肩甲骨の動きを良くしておくことは重要です。
そのためには、肩甲骨周りの筋肉を柔らかく保つことが必要です。
ご自分の肩に痛みがある方、今後出るのが心配な方はこの記事をぜひ参考にしていただけると幸いです。
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